父は優しい人だった。
そして、強い人だった。
愚痴は言わない。
怒るときは何日も考えて考えて、じっと怒る。
そして、相手に感情をぶつけないで、じっくりと自己解決する。

その父に、私は涙を流させることをした。
今の私が、私なのは、因果応報だと思っている。

何者にも慣れなかった私。

どうして何者にもなれなかったのか。

人と関わることが苦手で、上手くコミュニケーションがとれない。

それは、他人だけでなく、家族であっても同じで、誰に対しても深くかかわることにはためらいがある。いつもどこかで自分を繕って話す癖がある。

人は一人で生きていけるはずはない。誰かの助けがあって、生きている。

食べるものを買えるのも、造ってくれる人が要るから。

家の下に住めるのも、造ってくれる人が要るから。

洋服が買えるのも、造ってくれる人が要るから。

でも、それら全部を自分で出来るようになったら、人と関わらなくても生きていけるのだろうか・・・

必要最小限の食べ物を得て、必要最小限の小さな小屋に住み、着替える服が数点あれば、生きてはいける。

働くのは、その生活を支えるためで、より良い生活を望めば、その分、稼がなくてはならない。でも、必要最小限で良いのであれば、稼ぐ金額も少なくて構わない。

そんなことを考える時間の方が圧倒的に多い。

でも、そんな私でも、人のために役に立つ仕事をして、誰かに、「ありがとう」と、言ってもらえるような人間になりたかったなぁ・・・と、時々思う。

父の様に、静かに時を終われるような、そんな人間に。